泣いたら、泣くから。

 だけど、
 わたしにそんなことは…………っ!!!


 踏み出した足に力を込めてなんとかその場に踏みとどまる。


 
 思いを受け入れたいと望む気持ちに逆らうことほど、苦しいものはないと思った。

 願いに顔を背けなければならない辛さは、計り知れない。

 手を伸ばせば、それだけですぐ手が届くのに、望めばきっと応えてくれるとわかっているのに、わたしにはどうしても出来ない。



 目の前で、今にも泣きそうになる姪を、抱きしめてあげられない歯がゆさが喉の奥を熱くした。

 ぐっと、爪が食い込むほど強く拳を握りしめ、


「……そうじゃない」


 否定すると、姪は、笑った。
 いまにも消えてしまいそうなほど、儚い微笑みを顔に乗せて、言った。


「よかった」


 ――叔父さんに、嫌いって言われてお別れになっちゃうのは、さすがにきつかったから。


 姪の言葉に思わず「えっ」と声が漏れた。
 彼女は今、お別れと言ったのだろうか。

 間違いではない。不吉な発言であったことは確実だと思う。


「一花ちゃん……」
「うん。今日はね、叔父さんにちゃんとさよならを言おうと思って来たの」


 叔父さんと会える、最後の日だから……――。


 

 

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