泣いたら、泣くから。
 私の病気のこと、話しておくね。


 聞く気なかったら、流してくれてかまわないから――そう前置きして姪は話し始めた。



「私ね、生まれつき心臓が弱いの。軽い動悸とか発作なんてしょっちゅうで、それでも大きくなるにつれて少なくなってはきてた。休み休みでも学校は行けたし、運動にも支障はなかった。私、こう見えて部活は水泳部だったんだよ。今は灼けてなくて真っ白だし、体重もだいぶ落ちちゃったから説得力ないかもしれないけど」


 姪は苦笑した。

 そういえば、毎年盆に見かける姪の肌はこんがり焼けていたなと思い出す。
 今、目の前にいる姪はまるで雪のように白く、だいぶ痩せたらしい頬には以前のような膨らみは見えない。

 もともと、太っているという印象はなかったが、今はどちらかというと、細いより、痩せすぎているとさえ感じる。
 白いためことさら脆く見えてしまう太ももからふくらはぎまで同じ太さの足。
 掴んだらきっと指があまってしまうと掴まずともわかる腕の細さ。


 いつから姪はこのように変わってしまったのだろう。

 昨日今日でこれほど人間の見た目は変わらない。年月をかけてじわじわと変化した結果だ。
 
 真由が死に、姪が頻繁に出入りするようになって、病気のことを聞いて、それでようやく知った。
 真由が死ぬ前のような暮らしをしていれば、きっと気づかなかった。

 わたしは姪を、一花を、なにも見ていなかったのだな……。

 
「病気が見つかって、発症したのは二年前。あの日から私のすべてが変わった。病名は……わからないけど」
「わからない?」


 問うと、姪は自嘲するように薄く笑って頷いた。




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