泣いたら、泣くから。
「肝心なとこ教えてあげられなくてごめんね。病気のこととか言って、そこが一番重要なのに。 ――わからないっていうか、何度も聞いたんだけど、覚えられないんだよ。……ううん、そうじゃないね。覚える気がないって言ったほうが正しいのかな」
「覚える気がない? 自分の病気のことなのに?」
「うん。覚えたって、名前だけでどんな病気なのかなんて細かいところは私にはわからないもの。渡される薬、指示されるままに飲んで、それだけ。よくなってるのかすらわからない。慢性的な病気なんだって。波があって、その度に入院、退院を繰り返してる。最近はその波が来る間隔が短いんだって。薬も増えてさ、一度に飲む量半端じゃないの。だから、ご飯のあとは薬が待ってるって思うと気が滅入ってろくにお腹に入らない」
それで、この体型ということか……。
薬漬けではあまり食欲もわかないのだろう。
だが、それよりも。
「……間隔が短いとは?」
鋭く耳朶を打った姪の一言を自分で口にして、背筋にかすかな寒気が走った。
あまりの不吉さに、体が震えた。
それはきっと、
今までゆるやかな曲線を描いていたはずの姪の心臓に、なにかが起こったことを意味するのではないだろうか。
うるさく胸を打ち鳴らし始めた警鐘を聞きながら、わたしは姪の返事を待った。
しばしの沈黙が二人の間に流れ、
やがてしずかに口を開くと、姪は言った。
「悪化してるってこと……だとおもうよ」