泣いたら、泣くから。
奏斗の視線の先には季節の草花がプリントされた卓上カレンダーがあった。
歩み寄ってそれを手に取ると、ある一日を指さして「これは、なんだ」
「この黒い丸は」
バツとなにも書かれていない日の先に太いマーカーペンで書き込まれた黒丸。
愛らしいカレンダーの中で異様に浮き立つ不気味な色。
「私の手術日」
そう言った直後、奏斗の整った眉がぴくりと動いた。
「だけど、次発作が起きたら即って言われてるからアテにはならない。それより前になるかもしれないし」
カレンダーを持ったまま奏斗は私のほうに視線を向け、訝しげに問うた。
「そんなに悪いのか」
「引火寸前って言ったじゃん」
苦笑する私に奏斗は口をつぐみ、眉根を寄せてカレンダーにもう一度視線を落としてからもとあった場所に戻した。
姿勢を正すと私に背を向けてふたたび窓のそばまで移動した。
「……兄さんにこのことは」
「病気とは言ったけど、深刻さまでは伝えてない」