泣いたら、泣くから。
奏斗と入れ違いに咲希が花瓶を抱えて戻ってきた。
「ちょっと、どこ行くのよ」
「便所」
咲希を一瞥して奏斗は病室を出て行った。
叔父の細い背とは違い、遠くなる奏斗の広いそれを見つめ、私は無意識のうちに拳を握りしめていた。
死ねとは言わない。
それはつまり、私に、生きろ、と言っているのか。
言葉の裏に隠された本当のところにすぐ察しがついて、腹の奥がずんずんと冷えはじめた。
………生きろ?
ふざけるな。
私は咲希に気づかれないよう隠れて唇を噛みしめた。
おまえはどれだけ私を苦しめたいのだ………――――――!