泣いたら、泣くから。
そう、だったのか………――。
最近の姪の言動を見てきて、どうりで慌ただしさを感じると思った。
ときおり見せた苦しむ表情は、なんとか時間があるうちにわたしに気持ちを理解してもらいたいがため無理をしていたせいだったのか。
好きと、
何度も訴えるように言っていたのも………。
わたしはなんて愚かな人間なんだ。
一緒にいる時間はけして短くはなかった。
それなのに、姪の根っこの苦しみに気づいてやれず、今頃になって、それも、教えられてようやくすべてを知った。
知ろうとしなかった。理解しようとしなかった。
踏み込んではいけないのだと、受け入れるべきではないのだと、それが叔父としての姪との向き合い方であると―――
勝手な思いこみも甚だしい。
ようやく決心してくれた思いをわたしは踏みにじり、傷つけた。
ずっと、わたしに思いを届けようと命を削っていてくれたのに――。
わたしは、なんてことを………。
膝に置いていた湯飲みを咲希は机に戻すとふたたび深く頭を下げた。「どうかお願いします」
「もう私じゃ駄目なんです」
「いきなりどうしたんだい」
咲希に近寄りのぞき込むと咲希の目からは大量の涙が溢れていた。
「私じゃ、一花の心を動かせない。一花は、また数ヶ月前の彼女に戻りはじめています」
数ヶ月前。
というと…………――ま、まさか!?
咲希の手が私の腕を掴んだ。
震える指が食い込み、かすかな痛みが走った。
「誰の声も届かない。もう先生しか望みはないんです。お願いします。どうか、一花を、一花を助けて……」
「林さん……」
咲希は懇願するように、何度も何度も、かすれる声で繰り返した。