泣いたら、泣くから。
ね、私サイテーでしょ。
叔母さんを失って、叔父さんは一人になった。
それにすっごく悲しんでる。
こんなに絶好の機会はないって思った。
"楽しげに"、"笑みを浮かべて"、姪は言った。
「わかったでしょ。私は地獄行きが決まってる人間なの」
「一花ちゃん」
「私は、こういうやつなんだよ」
「一花ちゃん。―――一花ちゃん」
あまりに見ていられず、わたしは掴まれた手を握りしめた。
これ以上姪がなにも言わないよう、
自分で自分を苦しめないように。
「もう、やめるんだ」
言いながら腕を引き、改めて向き合うと、姪は不意を突かれたように「な、なに」
「一花ちゃんは、そんなことを言う子じゃないよ」
「言ってる意味わかんないけど」
顔を背けようとする姪の両肩を掴み、無理矢理こちらを向かせる。
「真由が死んで、一花ちゃんは悲しいと思わなかったかい?」
我慢の限界だった。
姪は、"嘘"が下手な子だ。
そんな彼女が、
つきたくもない嘘を無理矢理舌に乗せる姿はどうしようもなく痛々しかった。
この部屋からわたしを帰すために。そして、帰ってから姪に万が一のことが起きて、それでもわたしが悲しまないように。
言葉はすべて、わたしのために選ばれている。
そんなこと、やめてくれ。
わたしのために、嘘など、つかないでくれ。
せめて視線だけは合わせまいと懸命にそらしながら、姪は、
「お、思うわけないじゃない。チャンスって思ってたんだよ?」
「真由のことをよく思っていなければ、あんなに熱心に花壇の手入れなんかするかな」
「そ、それは―――あんなに広いのに庭が台無しじゃもったいないし」
「嘘」
わたしの視線に姪の瞳が揺らいだ。
やめて―――姪の目はそう言っていた。これ以上言わないでと。
だけどわたしはやめなかった。
ここを逃したら、揺らぐ気持ちを掴まなければ、姪をこちらに引き戻せないと、理由はないけれど、そう直感したのだ。
「真由が好きな花を、どの花よりも、一所懸命世話していたこと、わたしは知っているよ」