泣いたら、泣くから。


 間の抜けた返事をしたすぐあと、私の言葉の意味を理解したらしい友の顔が絶叫マシンに乗っているかのごとく引きつった。


「今から相手を探してアタックして、付き合って――なんてしなくてもいい状況に私はいますので」
「う、うそ……嘘でしょ一花。一花にカレシ……?」
「あ、いや……カレシじゃあないですけど」


 そこをつかれるとぐうの音も出ない。
 まだ相手がいるというだけで、アタックも昨日はじめたばかりだ。

 好きと言った直後の叔父の顔を思い出す。
 あのぽやーん面では、なにも考えていなかったはずに違いない。
 昨日のアタックは、完全なる私の負けだ。


「なぁんだ~。カレシじゃないならOKOK。一緒に行こう」
「立ち直り早くない」
「ポジティプシンキングだよ一花くん」
「……え、それ意味合ってる? ――いやいや、私マジ行かないし。夏はその人一本で行くもん」


 付き合っていないからといって他の男と遊ぶような真似はしたくない。

 というより、私は叔父以外の男にまったく興味がない。
 叔父を意識するようになってから、男との連絡はほとんどとらないし、連絡先を増やすこともなくなった。

 私はこの恋に、本気なのだ。


「一本でもいいから。人数集めたいだけだし」
「だったら他の子誘いなよ。私じゃなくてももっと可愛い子いるじゃん」
「――そうそう。一花よりもっと男受けする女子いるよ。たとえば三好さんとか」
「咲希、ちょっとそれどういう意味よ!」
「そのまんまっしょ」


 友の肩に腕を回し、窓ガラスを磨く三好を指さして咲希は笑った。
 咲希は私の小学校以来の友人である。 



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