泣いたら、泣くから。


 わずかに開いていた唇が引き結ばれ、やがて、解かれる。
 
 半分うなだれながら姪はこぼした。





「……だいすきだったよ」


 叔母さんのこと―――。
 死んじゃって、すごく悲しかった。




「うん」
「だけど、叔父さんのことも好きだった。矛盾してるかもしれないけど、私、叔母さんが好きな叔父さんも、全部含めて叔父さんが好きだったの」
「うん」
「ひどいこと言って、ごめんなさい」


 わたしは思いを込めて首を振る。

 大丈夫。
 気にしないで。
 わかってたから、ちゃんと。

 
 姪は、もう一度小さくごめんと言った。
 彼女の真白な手にはすこしずつ熱が戻ってきていた。

 
 姪の頭にそっと手を乗せる。


「一花ちゃんは最低じゃないよ。この世にはもっと最低な人間がいっぱいいる」


 
 目を眇めてわたしは言った。

 




 ―――………この、わたしのようにね。



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