泣いたら、泣くから。


「……叔父さん?」


 見上げる姪の目は、疑いと困惑が混ざっている色をしていた。

 夕陽がほとんど見えなくなった病室は陰気な薄暗さに包まれた。


 こんなことを話すのは、姪がはじめてだった。


「仮に、一花ちゃんが最低であるというのなら、わたしはなんなのだろう。最低以下だよ。人間ですらないのかな」
「叔父さんは最低なんかじゃないよ。全然そんなことないよ」


 なぜか必死に否定する姪にわたしは力なく首を振った。「そうじゃないんだよ」


「わたしは最低な人間なんだ」




 そう、誰よりも、最低で、卑劣なやつは、このわたし。




 地獄に堕ちるべきは、わたしなんだ。




 一花ではなく、この―――。




 不意に、きゅっと手を握られて、視線を落とすと、姪の寂しげな表情にぶつかった。

 どうしてそんなに悲しそうな顔をするのだろう。わからなかった。



「叔父さん……」
「わたしは酷い人間なんだよ。そうさ、真由を、妻を死に追いやったのは、他ならぬわたしなのだから―――」




 わたしが真由を、






 殺したようなものなのだから………―――。


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