泣いたら、泣くから。
「真由はわたしを恨んでいるに違いない」
すると姪は、それは違うと言って首を振った。「叔母さんは、叔父さんを恨んでなんかいなかった」
「叔母さんはいつだって叔父さんのことを心から思ってた。私は知ってるよ」
「いいや、すべて私が悪いんだ。真由のことも―――」
一花ちゃんのことも―――そう言おうとしたところで声が詰まった。
情けない。
この期に及んでもまだわたしは逃げたいと言うのだろうか。
姪の思いから背を向けたいと、傷つくことは怖いからと。
あまりの浅ましさにため息が出そうになるわたしへ大きな黒目をまっすぐ向けて姪は言った。
「私が叔父さんの抱えてる苦しみ全部持っていく。だからもうそんなこと言わないで。叔母さんが悲しむよ」
「―――わたしはそんなことを頼むために来たんじゃない」
そう慌てて否定すると、姪は冷静にも、「―――わかってるよ」
「わかってる。だけどね、私が叔父さんのためにしてあげられること、もうこれしかないから」
その一言にどくんと心臓が大きな音を立てた。
一瞬見せた、姪の憂い顔が、脳にこびりついて離れない。
なにも言えないわたしを置いて姪は先を続ける。
直後―――凍りつく思いがした。
「手術の成功は20%あるかないかなの」
生きたいと思う気持ちは認める。だけど、こればかりは変えることの出来ない事実なの。手術をしないと三ヶ月保たないかもしれないって言われた。
手術をしても、しなくても、私を待ち受ける運命は変わらない。
それぐらい悪いの―――。
そう言いつつ見上げる姪の目は、わかってと、言っていた。
これが現実なの。お願い、わかって―――と。