泣いたら、泣くから。
姪の見開かれた眼が揺れる。
小刻みに息が唇の間から漏れてくる。
「お、じ、さん……」
次の瞬間、大粒の涙がひとつ、眼の縁からこぼれた。
わたしは痛みを感じるほど強く、姪の手を握った。
20%でも可能性があるのならば。
生きることが出来るというのなら。
なにもかも捨てていいなどと、思ってはいけない。
どんなに辛くても、この先の未来がどんなに苦しいものだとしても、
いっぱい息を吸って、明日がくる喜びを感じるべきだ。
それを出来る権利が、姪にはちゃんとある。
間違いなくあるのだから。
「生きたいという思いを、諦めちゃいけない」
涙が出るのは、心が痛いからだろう?
死ぬことを恐れない人間は、苦しみなんて感じないのだから。
「叔父さん……」
「―――わたしに、時間をくれないか」
そう言うと。
え―――時間が止まったように、姪はぴたりと動くのをやめた。
同時に、涙も勢いを失ったらしく、流れていたそれだけがゆっくりと頬を伝っていく。
―――どういうことなの。
無言は、そう続きを促しているのだと勝手に解釈して、わたしは続けた。
「一花ちゃんを、一人の女性として認識できるようになるまで」
そして、
姪の気持ちにきちんと向き合えるようになるまで―――。
言いながら、これでもかというほど姪の目は大きく開かれていった。