泣いたら、泣くから。

「時間が欲しい―――」


　欲しいんだ―――と、言い終える前に、姪が腕にすがりついてきたので、やむなく中断した。


　なにも言わず、姪は泣き続けた。
　
　シャツが濡れて、染みが広がっていく。

　けれど、気にはならなかった。


　――――――ぽたり。


「……叔父さん？」


　気づけば、わたしの目からも涙が溢れていた。

　落ちた雫は姪の頬にぶつかって、彼女の涙と同化して流れていく。


「泣いて、くれるの」
「―――一花ちゃんも泣いてくれただろう。一花ちゃんが泣くなら、わたしも泣くよ」


　悲しいなら、一緒に泣いてあげよう。

　それで、胸がすこしでも軽くなるのなら。

　姪の気持ちを共感できるのなら。


　恥ずかしさなど捨てて、いくらでも涙を流そう。


　わたしは姪の震える背中をそっと撫でた。




　生きたいと願う命の震えを、わたしは何度もさすった。