泣いたら、泣くから。

四章-3


 
  ―――恭介叔父さんへ

 

 背中を押す言葉は、頑張れだけじゃないんだよ。

 気づいてないかもしれないけれど、叔父さんは私にたくさんの勇気をくれていたんだよ。

 叔父さん、言ってくれたよね。


『一花ちゃんはこれからも生きるんだ』って。


『生きたい思いを諦めちゃいけない』って。


 あれ、言われたとき私、本当に嬉しかった。

 心から、死にたくないって思った。

 叔父さんを待つために。約束守るために。

 生きたいって、願ったよ。

 絶対死にたくなんかない。なんとしてでも世界につながってみせる。

 私はこれからもここで、叔父さんのいるこの場所で生きるって。

 そんなふうに強く思えたの、はじめてだった。


 ほんとうにほんとうに、嬉しかったんだよ。


 言葉だけじゃ足りないくらい、叔父さんには感謝してる。

 感謝してもしきれないよ。

 叔父さんがいてくれたから、私、病気とちゃんと向き合おうって思えた。戦おうって決められたんだもん。

 叔父さんは、やっぱり医者になって正解だった。たとえそれが自分で決めたものじゃなかったとしても、医師って職業に就いたことは絶対間違いなんかじゃない。

 だって、

 メスを持つだけが医者じゃないでしょ?

 薬を渡して、では次はまた後日って言うだけが医者じゃないでしょ?

 私みたいに、心をケアできる医者だって、この世の中には必要だもん。

 叔父さんは、誰かの背中を押してあげられる、優しいお医者さんだよ。

 叔父さんは立派なお医者さんだよ。

 嬉しくないかもしれないけど、私が保証する。

 

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