泣いたら、泣くから。
美里が今年22なので順也は42歳である。
美里の父親が40後半なので、順也さんも美里と話すより美里の父親と話したほうが会話がスムーズに行くのかもしれない。
「ひどいでしょ? 父さんも順也さんもさぁ」
「でもしょうがないんじゃない? 実際、自分が産まれたときにはすでに成人してたわけだし」
「まあねぇ。だから葉多(ようた)寝かしつけて二人っきりになったら思いっきり甘えてやるんだ」
にっと笑う美里。思わず一花は吹き出す。「は。それじゃ順也さんも大変だわ」
「選んだ女が若かったんだから順也さんにはまだまだ頑張ってもらわないとね」
そう言いつつ立ち上がった美里は服についた砂を払い落とした。
ふと美里の顔が目に留まった。
……驚いた。
ほとんど年は違わないのに、夕陽に照らされる従姉の横顔はすごく大人びて見えたのだ。
女の顔。というか、母の顔。どう表現すればよいのかわからないけれど、とにかくすごく綺麗だった。まだ二十そこそこだというのに、過去の従姉とはまったくと言っていいほど違っていた。
「そうでしょう?」
一花を見つつ、同意を求める美里に、
「なに言ってんだか」
宙を見ながら鼻であしらった。