泣いたら、泣くから。


「じゃあ私行くから。気をつけて帰んなよ」
「うん、咲希も部活頑張って」
「あいよ」


 咲希が保健室を出て行き、ドアが閉まった音を確認すると、不意に手が震えだした。
 指先に力が集中する。

 わずかにシワが寄り、紙がくしゃりと折れた。
 そのまま力を込めると、文字が不格好に歪んでいった。


 紙が折れ曲がり、文字が完全に見えなくなる直前、


 ――………くっそ!!


 破り捨てたい衝動をなんとかこらえ、私は腕で顔を覆った。


 熱くなる目頭。
 ふるえる喉。
 嗚咽を必死に押し殺した。


 だが目裏(まなうら)に叔父の顔が映った瞬間、


 ――……だめ!


 耐えきれず、雫が一つ、頬を伝った。




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