泣いたら、泣くから。
一章-6
次の木曜も姪はやって来た。
最後の診察が長引いていつもより帰りが遅くなってしまったわたしを待たず、庭に入り、いつものように裸足で水をまいていた。
「一花ちゃん」
声をかけても返事はなく――そうかイヤホンをしているのだと気づき、わたしは姪の肩を叩いた。
すると。
「うわあ!」
驚いた姪はとっさに持っていたホースの口を上に向かせ、わたしはもろに頭から水を被ることになった。
「ご、ごめん叔父さん。気づかなくって。――タオルタオル!」
「い、いや大丈夫だよ。わたしこそ驚かせてしまって悪かったね」
「ううん。タオル、まだ使ってないからこれで」
そう言うと、姪は持ってきていたタオルをわたしの頭にかぶせた。
中に入ればタオルなどごまんとあるのにと思いつつも、姪の気遣いを無にすることも出来ずわたしはされるままになっていた。
しばらくし、ごしごしと拭いていた手が弱まってきたところでわたしは尋ねる。
「そういえば、体のほうはもう大丈夫かい?」