泣いたら、泣くから。
姪が体調を壊した日曜日のことだ。
わたしはずっと気になっていた。
次の日、電話しようと受話器を持ったはいいが、番号を押そうとしたところでいつも、
『行くな』
と目で制してきた兄の顔が脳裏をよぎり、確認を取ることが出来ずにいた。
どうして頑(かたく)なに"本当の"ことを言おうとしなかったのだろう。
寝室から出てきた姪のげっそりした様子は、明らかに夜更かしによる体調不良ではなかった。
父母揃ってなぜ嘘をつく必要があったのだろう。
口裏を合わせていた……?
だとしたら、一体どうして……?
ちっともわからない。
今、ここには具合を悪くした当の本人がいる。
間違いなく確かめるチャンスであった。
だがここでふと疑問に思うことがあった。
なぜわたしはこうも必死に嘘を見破りたいと思っているのか。
どうして真実を知りたいと強く願っているのか。
――……なぜ? ……どうして?
ばれないよう、頭の中でかぶりをふった。
わたしはどうかしている。
疑問に思うこと自体がまず間違っているのだ。
気になってしょうがないのは、わたしが医者であるからだろう。
もし姪が病を抱えていたら心配だからだ。
そう胸の内で結論を結んだ。
だが、どうにも釈然とせず、もやもやしたものが残っているような不快感がわたしを困惑させた。
「この間はごめんね。最近ちょっと寝不足で……。でも、もう大丈夫だから、心配しないで」
「……そ、そうなのか」
姪の返事は、燃焼しきれずくすぶっていた疑いを決定づけるものとなった。