泣いたら、泣くから。
「さあ、出かけようか」
「ところでどこに行くんだい?」
姪はにっこり笑って答えた。
「そこのホームセンターだよ」
……拍子抜けした。
姪の指定した場所は、想像していたものとあまりにかけ離れていたのだ。
てっきり若者が集まる明るいショッピングモールにでも連れて行かれるものだとばかり思っていた。
ふと気づくと、姪はわたしの手を取って車庫のほうを指さしていた。
「私、叔父さんの車に乗りたい」
「すぐそこだよ? 車より歩いたほうが速い」
「乗りたい」
「時間かかっちゃうし」
「乗りたい」
「……一花ちゃん?」
「乗りたい!」
「……」
◆
仕方なく、わたしは姪を車に乗せ、徒歩三分の距離を十分かけてホームセンターにやって来た。
「私、一度叔父さんの車に乗ってみたかったの」
少女らしく嬉々として喜ぶ姪を見、なんだかものすごく疲れた。
車を降りると、姪は店の中へは行かず、外の園芸コーナーへ足を向けた。
「なにを買うんだい?」
まるで箱のような形をした業務的店舗を見上げわたしは小首を傾げた。
とても華の女子高生と呼ばれる歳の子供が好んで来たいと思う場所ではないと思うのだが――。
姪は言う。「――花」
「花?」
「うん」
それなら花屋があるのでは――と言いかけて、姪が探しているものがプランターなどに植え替えるタイプの花だと気づき、すんでのところで言葉を飲み込んだ。
「兄さんか春乃さんに頼まれたのかい?」
「ううん。叔父さんの家に植えるの」