泣いたら、泣くから。
……は?
「水まいてて気づいたんだけど、けっこう枯れちゃってるの多くて。見栄え良くないから植え替えるんだよ」
「今ので十分だよ」
そう言い返してみるものの、やはり頑固な姪は一歩も譲りはしなかった。
「替えるの」
「だけど」
「替えるの」
「……」
「叔父さんはどれがいい?」
……。
姪は自分が買うべきものを頭の中にリストアップしてきたらしく、迷わず花の元へ移動すると元気そうなものを選んだ。
わたしの意見も取り入れつつ、買い物カゴは明るい色の苗でいっぱいになった。
そろそろレジに行こうかと腰を上げた姪を見、ふと、医者の感だろうか、姪の様子がおかしいことに気づいた。
だいぶ息が荒い。
それに、暑いはずなのにずいぶんと顔が白かった。
「……大丈夫かい?」
「なにが? 花ならもう選び終わったよ」
「そうじゃなくて。……ちょっと腕貸して」
「べつに、なんともないから」
手を差し出すわたしに背を向け、姪は近くにいた店員に声をかけた。
「清算を」
「かしこまりました。では店内のほうへ」
店員に着いていこうとする姪の肩を掴んだ。
「わたしの家に植えるんだからわたしが払うよ。それより一花ちゃん――」
「いいよ。私が勝手にしてるんだもん」
わたしを遮り姪はカバンから財布を取り出した。
「それもそうだけど、ちょっと腕を――」
「だからなんともないってば。払ってくるから車で待ってて」
……ああもう!
離れていく姪の背中を見つめながらこのままでは兄に悪いと思い、とりあえず体のことはあとからにしようと決めると、わたしは姪を追いかけた。
「わたしが払うから。一花ちゃんは待ってて」
「……そこまで言ってくれるなら。すいません、車まで運んでもらえますか」
「わかりました」