泣いたら、泣くから。

二章-2



 ――ねえ叔母さん。


「叔母さんは、どうしてそんなに熱心に花を植えるの?」

 「恭介さんが見るからよ」

「叔父さんが花を褒めるとこ、見たこと無いよ」

 「口に出して言わないだけよ。恥ずかしがり屋な人でしょう」


 叔母はなにかを思い出したようにふっと笑い、そしてまた花壇に視線を落とした。


「叔父さんは花が好きなの?」

 「知らないわ」

「知らないんだ」

 「だけど嫌いではないはずよ。花が嫌いな人って少ないと思うわ」

 
 花は、そこにあるだけで誰かの心を癒し、和ませるもの。

 恭介さんがふと、何気なく庭に視線を向けたとき、自然と笑顔になってくれれば、私はそれだけで幸せなの。


 にこにこと話す叔母。
 誰にでも好かれる穏やかな横顔は、すごく綺麗だった。


「花がないと、叔父さんは悲しくなるの?」


 叔母は言う。


 ……そうねぇ。今まで当然のようにそこにあったものが突然なくなってしまったら、悲しい気持ちになるかもしれないわね――


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