泣いたら、泣くから。
「庭、ありがとう」
新しい苗を植え替えたことで明るい色の増えた輝かしい庭を見つめながら叔父は言った。
「ううん。私がやるつもりで来たのに払わせちゃってごめんね」
「あれくらいどうってことないさ」
姪に対しての優しさにやるせない思いが募る。
叔父はどうしたって私のことを恋愛対象としては見てくれないのだ。
胸の奥でため息をこぼす。
……やっぱり叔母さんには、勝てないのかな。
湯飲みのふちに視線を落として沈黙する私を見、叔父がどうしたのと声をかけた。
「疲れたかい?」
「ううん。そうじゃなくて……。ねえ、叔父さんは来週暇?」
叔父は固まった。
思わず苦笑する。
そんなに顔引きつらせないでよ……。
「夏祭りの日、空いてないかな?」
「一花ちゃん、だからそういうことは――」
「お願い。それで最後にするから。もう無理言ってどこかに行こうなんて言わないから」
叔父を遮り私は頭を下げた。
こんなチャンス、もう無いと思うから。
――それに。
この機会を逃せば、しばらくは……いやもしかしたらもう………――
「駄目だよ。わたしと一花ちゃんは……」
「ただの叔父と姪ってだけでしょ? だったらそれでいいから。わがままな姪だって呆れてくれてかまわないから。だからおねがい、私と一緒に祭に行って」
「……一花ちゃん」
「行って。行って……」
私は何度も何度も繰り返した。
顔は上げられなかった。
叔父の困っている顔を見たら、泣いてしまいそうだったから。