泣いたら、泣くから。


「教えてくれ。どうしたらあの子を傷つけずに、この先もいままでどおりの叔父と姪としてやっていけるだろうか」


 もちろん返事はない。
 
 そんな虫のいい話があるはずがないのに。――無責任すぎる自分にほとほと呆れる。
 だがもし、……その問いに答えがあるのだとしたら、いくら金を積んでもわたしは知りたいと願う。

 
 ……誰かが傷つき、それで自分まで傷つくことは、耐えられない。
 

 姪が帰り際置いていった携帯番号を書き落とした紙を見つめる。


『……噴水公園。私、ずっと待ってるから』


 これが最後だと姪は言っていた。
 最後ということはつまり、もう強引な誘いはしないということだろう。

 祭が終われば、わたしは元の生活に戻れるのだろうか……。


 ふとそう考え、はっとして額に手を当てた。

 
 まさかわたしは、また……


 不意に遺影を見上げ、すぐ顔を背けた。
 笑う真由の顔を直視することはどうしても出来ない。




 またわたしは――




 逃げようと、しているのか――。



< 45 / 171 >

この作品をシェア

pagetop