泣いたら、泣くから。
プランターや鉢に植えられた小ぶりな花々にはジョウロで、低い柵で囲まれた花壇にはシャワーのついたホースで一気に水をまいた。
からからに乾いていた土が一気に水を吸っていく。
余った水と共に流れてきた土が泥となって足にかかった。
「汚れちゃうよ」
「ヘーキだよ。洗えば問題なし。私は裸足が好きなの」
砂利と粘土が足に不快感を与えるのはかかったその瞬間だけ。
慣れればどうってことはない。むしろ、暑さに水の冷たさが心地よいほどだ。
「女の子は汚れることが嫌いだと思っていたよ」
「汚れることは誰だって嫌でしょ。だけど、水と泥は別。この二つって人間の本能をくすぐるものだと思わない?」
「それは子供限定じゃないのかな」
「はしゃぐ場合はね。ただ触れるだけなら私は全然嫌じゃない」
汚れることよりも、なにより重要なのは地に足が着いているということ。
それは、生きているという証。
大地を踏みしめているこの時間が、私はこの上なく好きだ。
たとえ爪の間に砂が入り込んだとしても、肌色が消えてしまうほど泥にまみれても、そんなことは関係ない。
地面に立っていることに意味がある。
ときどきしゃがんで葉っぱの裏についた虫をとりながら私は庭の手入れに没頭した。