泣いたら、泣くから。
まさか同じ学校に通っていたとは……――。
葬式の日は例年になく暑い日で、男奏斗の格好は黒のズボンにシャツに黒のネクタイだった。
学ランの学生なら誰でも出来る服装でどこの学校か判断できなかった。
愕然とした。
だけど、まさか。
………こんなことって。
その場に崩れ落ちそうになりながらもなんとか膝を叱咤し、声が震えないようにしながら答えた。
「……そうだったの。叔母さん、まだ若かったのに、残念だったね」
「ああ……昔から病気がちだったからな」
奏斗の声は今の私には右から左だった。
なにを言われても、体に入ってこない。
死んだ叔母の弟が同級生――その事実があまりにも衝撃的すぎた。
そしてそのショックは、奏斗の顔に一瞬落ちた影によって私の心にさらに重くのしかかってきた。
やはりまだ姉のことを口にするのは大変なことなのだろう。
わずかに眉の間にシワを寄せ奏斗は尋ねる。
「義兄さんは、元気にしてるか」
「義兄さん……ああ恭介叔父さん。う、うんまあ。元気がないわけではなさそうだったけど」
「そうか……。義兄さんほそっこいだろ。一食でも充分て体してるからさ、姉貴いなくなってもちゃんと食ってるかなって心配してんだ」
苦し紛れに笑う奏斗をこれ以上直視できなかった。
後ろめたい気持ちでいっぱいになり、泣きそうになった。
自分がしている行為の重さを改めて痛感させられた。
喉の奥がひどく熱く、痛い。
……私は本当に、最低なヤツだ。
「痩せてるのは、もとからだし。家もときどき顔出してるから……」
「そうか……。なら安心した。 なんか、悪かったな。昼間からこんな暗い話して。暗くするつもりなんかなかったんだけど」
「……い、いや」
なんとか顔を上げ――しかしまた、下を向くことになった。見てはいけないものを見てしまったような気分だ。
奏斗の目に、涙が浮かんでいたのだ。