泣いたら、泣くから。


「一花、またあんた弱気になってるよ! 決めたんでしょ? 好きってわかってもらうまでどんなことにも負けないって」
「だけど……」


 咲希の指が食い込んで痛みが走り、続きが言えなかった。
 苦しくなるほどまっすぐな強い瞳が私を見返す。


「あんたはあんたでしょ。それともなに? 弟に悪いから、叔母さんに申し訳ないから、だから好きな人を諦めるの!? そんなこと、あのときもう振り切ったはずでしょ!?」





 誰かを傷つけることを怖がって、自分の想いを殺して、そのまま死んで後悔しないの――!? 




「気持ちを止められるの?」



 私は首を振った。

 
 止められなんかしない。
 出来るはずがない。

 
「だったら後ろを振り返っちゃ駄目だよ! 私は何があったって一花の味方だから」


 咲希は微笑むと私をそっと抱きしめた。


 間に挟まれたしおりにシワがついてしまうと言うと「そのときは杉下が委員長に謝るわよ」そう言って咲希は笑った。


 
 
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