泣いたら、泣くから。
わたしの傍らを通り過ぎ、あっという間に姪は人込みに消えて行ってしまった。
後ろ姿が見えなくなり、わたしは途方に暮れた。
追いかけようにも、その場をぴくりとも動けなかった。
……わたしは姪を、とうとう傷つけてしまった。
腹の奥がずんずんと冷えだし、指先が震えはじめた。
わたしに、姪を追いかける資格があるだろうか。
追い着いたところで姪にどんな言葉をかけてあげられるだろうか。
手を繋いでいたのに、わたしはろくすっぽ力を入れて握りかえしておらず、姪の手は自分の意思ですんなりと抜け、離れていった。
――………一花、ちゃん。
空いた手を見下ろし、そこに触れる空気の異様な冷たさに切なさにも似た苦しみをおぼえた。
わたしは、あんなことを言いたかったのか……?
本当に……――――――?
ふと頭に浮かんだ疑問符にわたしは混乱した。
言おうと決意した内容をわたしは全て伝えることができた。
最後まで言い切ることは叶わなかったが、肝心なところはちゃんと言葉にしたつもりだ。しかし――
納得できないもやもやした――苛々した感情が渦となってわたしの中を駆けめぐっていた。
小首を傾げた。
わたしはなにを間違えている?
……まちがい?
…………どれが?
いま感じている胸の痛み? それとも姪に伝えたこと? 追いかけていかないいま?
頭痛が襲う。目頭が熱い。
どうしていいのかまるでわからない。上手く思考が働かなくなった。
そのとき。
「……あの、大丈夫ですか」
小さいながらもなぜだかはっきりと聞こえた誰かを心配する声にはっと顔を上げる。声は林のほうからだった。
直後、胸の奥で警鐘がけたたましい音を立てはじめた。
――まさか……!?
嫌な予感がしてわたしはとっさに駆け出した。