泣いたら、泣くから。
まさか………――。
そんな。
自分で出した考えに、愕然とした。
そんなはずはないとかぶりを振るが――どうしても否定しきれない。
そんな……いや、まさか……でも………。
繋がりの絶たれた携帯に視線を落とす。
ライトはすでに落ち、真っ黒の画面には俺の顔が映っていた。
一花は、恭介と祭に行っていたのか………――――――?
今のいままで話をしていたのが恭介なら、そう考えるのが当然の流れではないだろうか。
だが、それならそうとなぜ俺たちに恭介と行くと言っていかなかった?
友達の咲希ちゃんと出かけるなどと嘘までついて。
恭介と祭に行くことをどうして隠したんだ――――――?
『おい、一花!』
いつもなら一花ちゃんと呼んでいた恭介が一花を呼び捨てにした。
焦っていたようだからそのはずみにたまたま、ということも充分に考えられるがあいつは感情に左右されて人の呼び方を変えたりはしない。
ならば……。
すやすやと眠っている一花に視線を落とす。
行くときにはなかった牡丹が手の中で揺れている。
おそらく、恭介に買ってもらったのだろう。
信じたくはない。だが、疑わずにはいられない。
一花は……
一花と恭介の間には……なにかがある――――――。
そう結論づけたとき。不意に牡丹の髪飾りがくしゃりとつぶれた。
一花が握ったのだ。
嫌な予感がして顔に視線を移した。息をのんだ。
慌てて階下にいる春乃へ向けて叫ぶ。
「お、お母さん! 大変だ一花が!!」
苦悶に満ちた一花の顔は大きく歪んでいた。