泣いたら、泣くから。
私の様子を訝しく思ったらしい咲希は眉をひそめ言った。「……約束したもん誰にも言ってない」
……もちろん、おじさんにもね。
「よかった……。ありがとう咲希」
心底ほっとした。安堵の息をつく。
――がしかし、咲希の私を見る疑わしげな視線はまったく変わらず、むしろさらに険しくなってどうしてと首を傾げてきた。「どうしてなの?」
「どうしてって?」
「どうしておじさんに話さないの? 好きな人には見舞いに来てもらいたいものじゃない普通? 看病してもらいたいとか思わないの?」
「思わないよ」
今度は私が即答する番だった。「絶対来て欲しくない」
「なんでそこまで……。おじさん一花のこと心配して来てくれたんじゃん」
「心配してくれるのは叔父さんの胸の中だけで充分なの。見舞いなんて形はいらない。いらないの」
なかばムキになって答えると咲希の眉がぴくりと上がった。
「一花、あんた矛盾してない? 好きだから自分の体のこともそっちのけで会いに行くんでしょ。それなのに、相手が心配していざ会いに来ると拒否るなんておかしいじゃん」
「おかしくなんかない! 咲希に私の気持ちはわかんないよ」
「な、なによそれ! 私の言ってることなにも間違ってないと思うけど」
「間違ってるとか間違ってないとかそんなのその人にしかわからないでしょ。私は叔父さんに来て欲しくないの。矛盾してたって私は会いたくないんだよ――……っ」
久しぶりに声を荒げて胸の奥が苦しくなった。
反射的に手を当てると咲希の顔がさっと強ばった。
「……ご、ごめん一花。私つい」
「ううん、私のほうこそごめん」
咲希が背中をさする。
何度か深呼吸を繰り返し、ふうとゆっくり息を吐いた。
落ち着いたところでそっと、肩に乗った咲希の手に己の手を重ねた。
「……見せたくないんだよ」