泣いたら、泣くから。
「見せたくない? 今の姿ってこと?」
私は頷く。
寝間着姿のこの格好も、病院のベッドで横になる私も、自分でもびっくりしてしまうほど青白い顔も。
この場所にいる私を一瞬でも叔父さんの目に留めたくない。
弱っている私なんて私じゃない。
それに――。
「それに、見せたくないの。病魔に冒される人を。見たらきっと、叔父さんは悲しくなる。苦しくなるから……」
「それって……」
咲希は私が言いたいとすることをちゃんと酌み取ってくれたらしい。彼女は顔を背けて、「それって、一花が真由さんと重ねられるかもしれないから?」
私は窓の外に目を向けて苦笑した。
原因不明の病気を患いこの世を去った叔母、真由。
やせ細り、いたるところから血管が浮き出て、真っ白になって死んでいった叔父の妻。
私を見たら、私の病気を死ったら、叔父はまた思い出すだろう。
妻を亡くすまでの戦いの記憶を、死んだ直後の喪失感を、取り残された孤独感を……――。
そんなこと、させるわけにはいかない。
「……重ねられることはいやじゃないの。ただ、私のせいで叔父さんが叔母さんを思い出して苦しむのは耐えられない」
嫉妬じゃない。
――……そりゃ、焼き餅の気持ちがまったくないといえば嘘になるけれど、
私は純粋に叔父さんにはずっと笑っていて欲しいと願うから。
だから会うことは我慢する。これも私が叔父さんを想う好きの形の一つだから。
目が合うと咲希は慌てて顔を背け立ち上がり「やっぱわたしが水替えてくる」とそそくさと部屋を出て行った。
親友の背を見送り思わず微笑した。