泣いたら、泣くから。

「に、さん。やめ、ろ……!」


 なんとか手首を掴んだが思うように力が入らない。
 血走った兄の目が私を見上げる。恐ろしさに喉が震えた。


「おまえが一花を祭になど連れて行くから……一花が、一花がどれほど苦しんだかわかっているのか!?」
「いちか、ちゃんになにか、あったのか」


 祭りのあと、電話が途中で切れた――
 おそらくあのとき、もしくはそのあと、発作以上の苦しみをうったえ姪は病院に運ばれたのだ。


 わたしのせいだ……
 わたしが一緒に祭に行ったりしたせいで、姪は………。

 ちゃんと断ってさえおけば、苦しめずに済んだのかもしれないのに……。


 途端に頭が冷え、痛みすら感じられなくなった。
 だが直後、兄の手にぐっと力が込められ一瞬で頭に血が上った。

 まずい、と思った。


 その瞬間。



 耳をつんざくような悲鳴に似た甲高い声が空気を切り裂いた。



 

 ――――――「やめて!!!」



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