泣いたら、泣くから。
「俺が、ガキんとき……つってもそのころにはもう姉貴は中学生で、体が弱いって知ったのは幼稚園に入ってからだけど、姉貴は月に二三日は必ず学校を休むような体だった」
奏斗はぽつぽつと話しだした。
話ながら眉が苦し紛れに寄るのは、あまり思い出したくないことだからかもしれない。
亡くしてまだ半年にもならないのだ。
思い出にするにはまだまだ時間が足りないのだろう。
それは、私も同じだからわかる。
「……知ってる」
「そうか。姉貴は、仕事についても休んでばっかですぐにクビにされて、一所懸命、医者にも通ったけどよくなる気配はなかった」
医者、という言葉に私は反応した。
もしかして――。
「真由さんの担当が、叔父さんだったの?」
しかし奏斗はそれを否定した。「ちがう」
「義兄さんと出会ったのは、姉貴が結婚する二年前だ」
叔父が結婚したのは今から四年前。当時28歳。
2年前というと26歳だろうか。
真由は叔父の3つ下だから、23歳のときに二人ははじめて会ったことになる。
そのとき私は………
6年前――私は小学四年生。
まだ10歳にも満たない幼き日々。
周りがみな、年近い異性を意識しはじめる中で私だけが、一回りも違う叔父にたいして淡い思いを抱いていた。
そのせいか、このもどかしい気持ちが恋と呼べるものかどうか判断が出来ずに悶々とした毎日を送っていたのを覚えている。
そんなとき、叔父は真由と恋をした……。
今日のような、秋風が吹く晩夏だったと奏斗は続けた。
「ある日、姉貴が急に倒れたんだ」
搬送先の病院で、姉貴は義兄さんと会ったんだ。