*桃色キス*短編
桃色キス
ファーストキスの味って
何味なのかな。
柚は無味だって言ったけどあたしはーー
「桃子!」
「ひゃ!…柚!」
振り向くと怖い顔をした柚の姿があった。
「な、なぁに?」
「なあに~?じゃないでしょ!このボケ子!移動教室よ!早くしなきゃ遅刻だし!」
「あ!そっかッ」
あわあわと教科書と筆箱を用意して立ち上がる。
ガチャン!
「あー!何やってんのよぉ!」
「わ~ん、ごめんッ」
床に落ちて散らばった筆箱の中身を慌てて拾う。
柚も手伝ってくれた。
あと1個…。
ん~、と手を伸ばして拾おうとすると誰かがそれをヒョイと拾い上げた。
「あ…ーッ」
ありがとう。と言おうとしたあたしは固まった。
「ん。はい」
拾ってくれたのが、片思い中の郁斗君だったからー…。