危険な同居生活
黒服の男は完全に苦笑いを作り上げて、へなへなと座り込んだ。


そして、何やらブツブツと呟いている声が小さく聞こえてきた。


「お客様が逃げて行く、お客様が逃げて行く、お客様が逃げて行く、お客様が逃げて行く……」


活気が戻ってきたばかりだというのに、これはキツイな。


同情するぜ。


「お客様を返せー!」


突然、へなへなと座り込んでいた黒服は、勢いよく外へと飛び出して行った。


結局、俺一人が残ってしまったじゃないか…。


って、俺も行くべきだよな?と少し悩みながらも大きな穴から外へと足を踏み入れた。


ちょうどその時、もう一度、激しい音と共に大きな爆発が起きた。


思わず、外へ出した足をまた店の中に戻してしまう俺の弱さ。


恐い。怖い。恐い。


と呪文のように何度も呟きながら瞳を強く閉じた。


そして、ちっぽけな勇気を振り絞って俺も外へと勢いよく飛び出す。
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