危険な同居生活
俺の前に立ち、店内をキョロキョロと見るミサさんを後ろから見ていると、クスっと笑ってしまった。



右に左にと、忙しく動いている小さな頭が、なんかおかしくて。



「田中さん。見て下さい!テーブルとイスが、たくさんありますよー」



興奮し、声のトーンが上がるミサさん。


「そうですよ。ここは、たくさんの人が一緒に食事をする空間ですからね」



「そうなんですかー。皆さんと一緒に食事って楽しそうですね」


小さな瞳をパチパチと動かして、胸の前で手を合わせ喜ぶミサさんの姿を見ると、俺も嬉しい気持ちになる。



「お客様。すいません。何名様でしょうか?」



突然、俺の幸せな一時を邪魔する声が、聞こえてきたと思ったら、白のワイシャツに黒のズボン、赤い前掛けを纏った店員が現れた。



「えっと、私と田中さんだけです」


ミサさんは、慣れないながらも、指を折り数えて店員に答えた。


俺も、店員に小さく何度も頷き、それから店内を案内された。
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