危険な同居生活
誰も居ないと思っていたから、突然の音に俺は変な声を上げて驚いてしまった。


入り口付近で待つ二人は、それを見て、ケラケラと俺を指差して笑ってるわけで。



俺は、もう一度踵を返し、厨房の中へ忍び足で潜入を始める。


厨房の入り口から、こっそり頭だけを出して、左右を確認をすると、誰かが居る気配を感じた。



「あーあ、あれからお客さんが全く来ないし、バイトも皆辞めちゃうし、もう、やってられるかー!」



まだ姿形は確認できてはいないけど、やはり誰かが居た。


しかも、何か酒のキツイ匂いがプンプンと漂う。



酒が苦手な俺は、匂いだけでも気持ち悪くなる。



「すいません!」


もう一度、俺は呼びかけた。


「はい。はいはい。何かご用ですか?」


ヨレヨレとした返事に合わせ、俺の視界にはフラフラとビンを握りしめ、顔を真っ赤にした黒のスーツを纏う男が現れた。
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