ジェネシス(創世記)
六五00万年前、火星から飛来(ひらい)した巨大な隕石(直径約一0キロメートル)が中南米(ちゅうなんべい)のユカタン半島に落下した。直径約二00~三00キロメートルのクレーターが、形成された。

 中南米から大西洋一帯の大陸を、巨大な高波が襲(おそ)った。標高三00メートルの台地が、呑み込まれた。

恐竜たちは山の上に逃(に)げる暇(ひま)もないほど、高波は押(お)し寄(よ)せた。標高の低い島々(しまじま)や海岸線は、たちどころにして海の中に沈(しず)んでしまった。

 基本的(きほんてき)に「津波(つなみ)」とは、地震によって発生するものであって、他の自然災害によるものは「高波(たかなみ)・高潮(たかしお)」などと呼ばれる。

 その半島は、内陸部(ないりくぶ)を深く広範囲(こうはんい)にえぐられた。大気中にも、高圧力の衝撃波が走った。

大地の砂塵(さじん)が、天空に舞(ま)い上(あ)がった。「地殻(ちかく)津波(つなみ)」が発生した。地球の全表面が、厚(あつ)く黒い雲が数万年にもわたって覆(おお)い尽(つ)くされた。

 隕石の激突(げきとつ)により、地球の地軸(ちじく)の角度(かくど)が突然(とつぜん)変化(へんか)した。

現在の地球の真北(しんぽく)は北極(ほっきょく)星(せい)(ポラリス)ではあるが、この時代は別な恒星が真北を指(さ)していた。その真北が、突然「こと座のベガ」に変わったとしたらどうなることであろうか。

 隕石は地球の地軸を揺(ゆ)れ動(うご)かし、緯度(いど)を数度ずらした。北の大陸は南へ、南の大陸は北へとずれ込んだ。緯度が一度動くだけで、気候や地殻は大変動(だいへんどう)を起こすことであろう。

 その衝突によって、南と北の磁極(じきょく)も逆転した。巨大な隕石が落下するたびに、その衝撃(しょうげき)で地球内部の鉄(てっ)鉱石(こうせき)が異常をきたし、北と南の磁極を逆転させてしまった。

今まで、南から放出(ほうしゅつ)されていた磁力(じりょく)線(せん)が、逆に北から磁力線を発(はっ)し南に吸収されてしまったのだ。

 

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