ジェネシス（創世記）
ロアという土地の領有権を巡って、両者は対立した。標高二０三メートルのちっぽけな高台だ。どこで間違ったのか、二つの陣営からおばさんたちがシャシャリ出てきた。

愛する家族、亭主や息子や父親、兄弟たちが糸も簡単に殺されて黙っていられなかったのだ。

　協議の結果、血で争うことをやめて、「野球」で決着することになった。スポーツによる戦争だ。負けても文句は言わない。それが絶対条件だ。

後継者ヨナとパレスの国王は、両者のおばさんたちに圧倒(あっとう)されて渋々(しぶしぶ)と認(みと)めてしまった。

　一チーム一一人。当時の野球制度やルールはまだ、確定されていなかった。ルールの統一は、その場で早急に決められた。広大な土の敷地で、試合は開始された。

パレスの選手は、屈強な肉体美でたくましい兵士だ。ラエルの選手は、なぜか青年ばかりだ。投手はダデ。監督は、ノギだ。

青年とはいえ、草野球チームから選抜されたベテラン選手である。試合が始まるとノギ監督は、パレスチームの個人個人の特性を理解した。

ホームランバッター、ヒット専門の者、バントの上手い者、やたらと地面にボールをたたきつける者、フライが多い者、走塁に適した者、強肩の者、軸足にクセのある者などを見極めた。

ベンチから、選手に向けてサインを送った。打者に応じて、選手たちの守備位置を変えさせた。パレスチームの選手が打つと、予想通りの場所にボールが届いた。アウトが続いた。

　八対七。その結果、ヨナチームは流血することなく、勝利を手に入れるのであった。標高二０三メートルの小さな高台だけど、多少見晴しは良好だ。

今後、戦をする上での前戦基地としては、不可欠な場所なのだ。そこは、「二百三高地」と呼ばれた。

「主は彼とともにおられ、彼はどの戦いにおいても勝利を治めた（サムエル記、上）」

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