ジェネシス(創世記)
ある日ヨナは、父がダデを憎んでいることを知った。家臣たちは、それは「主」から見放され「悪魔」に見入られたのではないかと、噂した。

それでもウル国王は、「主」から選ばれた偉大なる国王、絶対的な権力者だ。ウル国王の御言葉は、「主」の言葉と同じなのだ。

 精神分析医は、ヨナとミカにウル国王の病状を伝えた。ウル国王は、アルツハイマー病と診断された。

それは、脳内で分泌される神経伝達物質、アセチルコリンの低下によって記憶力や認識能力を喪失していく病気であった。

 ウル国王は、王位の存亡を恐れている。ついに感情を抑えることができず、部下たちに暗殺命令を下すのであった。理由は謀反だ。

ダデの妻ミカは、父ウルによる暗殺計画を知って、逃亡を勧めた。ダデは素直に従い、一人で逃げるのであった。

「私を逃がせ、さもないとお前を殺す(サムエル記、上)」

 ウルに服従する者たちが、ダデを追いかけた。次期国王のヨナは、親友ダデを守ることに信念を注いだ。

一つの国内で二手に分かれ内紛を起こすことは、国家の破滅を意味している。パレス人に知られたら、大事である。このスキをついて総攻撃を受ければ、確実にラエル国は大敗する。

 ダデはしばらく、偉大な司祭者ムルの屋敷に隠れ潜んだ。それでも、追ってはすぐそこまできている。次にダデは、ヨナの陣営に逃げ込んだ。追ってが来るたびに、また逃亡を繰り返した。

「死と私との間は、ただの一歩です(サムエル記、上)」
 
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