ジェネシス(創世記)
「武将たちは、お前を好まない。今は、平和に帰ってほしい(サムエル記、上)」

 ラエル軍とパレス軍が、「関ヶ原」で総攻撃を始めた。パレス人の一部の軍隊が、ラエルに寝返った。ダデの軍隊だ。アキ王はダデの軍隊を前線から、あえて外したのだ。

 敗退したウル国王・ヨナの軍隊がボア山の上で陣営を張っていた。これが最後の決戦になる。参謀たちの策略も尽きていた。老兵に戦うだけの覇気はない。

 ボア山で、ラエル兵とパレス兵の乱戦が始まった。弓矢と弓矢が天空で交差した。人と人とがぶつかり合う。

剣と剣が重なり合い、火花が散った。叫び声が、森の中に響きわたった。血しぶきが飛散し、山が赤く染まった。

 ボア山でウル国王の四人の息子のうち、三人が戦死した。長男のヨナも、名誉ある死を迎えた。ウル国王は、ヨナの遺体を抱き抱えて泣き叫んだ。

ウル国王は覚悟を決め、切腹しようとした。その瞬間、稲妻がウル国王に直撃した。林立する樹木に当たらず、まるでウル国王をねらったかのように落雷した。「主」が裁きを下したのだ。

「主は生きておられる。主がサウルを打たれるだろう(サムエル記、上)」

 ダデは遠い場所で、ボア山の頂から黒煙が上がっているのが見えた。ハンから、ウルの死の報告を受けた。涙を誘った。同時に、ウル国王からの逃亡生活にも終止符が打たれた。

「ギルボアの山よ、生けにえを求めた野よ。お前たちの上には露も結ぶな、雨も降るな(サムエル記、下)」
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