ジェネシス(創世記)
ダデは神官たちから、次の国王に指名された。しかしウル国王の四男イシが、国王の座を継承した。国内に二人の国王が存在した。

北にイシ、南にダデと国が分裂した。それがパレス人の国王に知られれば、総攻撃を受ける。敗北が目に見えている。

 ダデは早急に、アキ王と酒を酌み交わしながら和平条約、不可侵条約を結んだ。戦争を終結させるためだ。

戦争に、勝者も敗者もいない。あるのは死体の山と憎しみだけだ。二人の友情は、国の安泰へと導いた。

「将来の戦争は勝利に終わるのではなく、相互の全滅に終わるのだ(ラッセル)」

「敗戦ほど痛ましいものはないが、勝利もまた失うことが大きい(ウェリントン)」

 将軍ネルは、ダデに寝返った。我がままに育てられたイシ国王に、腹立たしさを覚えていたのだ。けれども、ダデの将軍ヨブルは、もともと将軍ネルを嫌っていた。

「船頭多くして、船山のぼらず」

 ダデの下に将軍が二人も存在しては、将軍ヨブルの立場がない。将軍ヨブルは部下に命じて、将軍ネルを事故死と見せかけて殺害させるであった。

横暴で強慢だったイシ国王もまた、将軍ヨブルの部下に殺されてしまった。ウル国王の家系は、絶えてしまうのであった。

「主は、主君、王のためにサウルとその子孫に報復されました(サムエル記、下)」

「ご覧下さい、私たちはあなたの骨肉です(サムエル記、下)」

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