ジェネシス(創世記)
ダデ国王は国造りに励んだ。道路を作り、用水路を作り、民たちの居住地を造って都市開発を計画した。農業・酪農・漁業・林業・製鉄所・石材所・自由貿易を発展させた。

 ダデ国王もまた、権力に酔いしれてしまった。おぼれてしまった。それはすぐに訪れた。

軍人ウナクの妻バエに、ダデ国王は心を奪われ、乱交を重ねてしまった。彼女は妊娠した。戒律では、「不倫」は重大な犯罪だ。

男性はむち打ちの刑だが、女性は死罪だった。男女差別も甚だしい。バエを救うためにも、国王としての尊厳を守るためにも、それを隠そうとダデ国王は策略を練った。

 ダデ国王は、ウナクをすぐに戦地に赴かせて、戦死するように仕向けた。それは、元ウル国王がダデ国王にしたことを、実行しようとしている。

ダデ国王は、無意識のうちに実施していたのだ。ダデ国王はまだ、己の過ちに気がついていない。

 ウナクは戦死した。これでホッと一安心し、二人は晴れて結ばれた。息子が生まれた。これらの事実はすでに、民に知られていた。

国王ゆえに、神官も司祭者も何も言えなかった。不倫を口実に処罰しようとする者は、だれもいない。

 しかし民は許しても、「主」は許さなかった。天罰はダデ国王ではなく、直接息子にもたらした。生後まもなく、熱にうなされて病死してしまうのであった。

「私はあなたの家の中からあなたに対して、悪を働く者を起こそう(サムエル記、下)」


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