ジェネシス(創世記)
私が、ラエル大学の経済学部に合格した時、父カンのほうが涙を流して喜んだくらいだ。モンは法学部に入学した。学部は違っても、仲が良かった。

モンは王族だから、いくら落第点をとっても多少は優遇された。三人の神官は、そんな出来損ないのモンを、なぜ「国王」として選んだのだ?

 実力主義、能力主義の私としては、憤りを覚えた。しかしモンは、国王になってから知力や行動力に遺憾なく発揮した。

ダデ国王は戦略家で、武力をもって領土を拡張する国王だった。殺戮を、好んでいたようだ。

それを息子のモン国王が、和平交渉をもってラエルの民たちの生活を潤した。「主」がモンに望んだことは、戦術ではなく「知恵」を求めたことだ。

 私は上級国家公務員試験に合格し、「財務省」の幹部候補生となった。その後、モン国王の副官房長官として従事した。

にもかかわらず、私の提案は全てモン国王によって却下された。モン国王の発想のほうが、優れていたからだ。

それでもモン国王は、私を側近としてそばに置いた。私と激論を交わすことで、刺激され良き知恵がでたのであろう。

「千人の中の一人が、我々を兄弟よりも一層勇敢に助けてくれるであろう(ソロモン)」




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