ジェネシス(創世記)
パテ国王の軍隊は、犬を数十匹ほど連れていた。その中の数匹が、狂犬病を患っていた。深夜、パテ国王は狂犬病の恐れのある犬たちを、野に放ちそれを同盟軍へと走らせた。 

病犬たちはパレス兵たちを襲い、咬みついた。慌てた彼らは、犬たちを刀剣で斬り殺した。狂犬病の潜伏期間は半月から三カ月。

咬まれた多くの兵士たちは、水を見ただけで、嚥下筋(えんげきん。胃に送り込む筋肉)が痙攣した。よだれをたらし、目付きが鋭くなっていた。

 同盟軍との決戦の時がきた。パレスの同盟軍とユダ軍が対峙した。ユダ軍は士気を高めるために賛美歌を歌い始めた。

そんな時パレス兵たちは、発狂しだした。その歌声が、悪魔のささやきのようにも聞こえたのであろうか。夏場の暑さのせいであろうか、軍隊の三分の一以上が、気が狂ってしまった。

 パレス兵は神経系統が冒され、持っていた刀剣で仲間を虐殺し合った。剣と剣が火花を撒き散らした。

同盟軍の大部分が、死に至ってしまった。ユダ軍は一人も血を流すことなく、戦わずして勝利を獲得するのであった。


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