ジェネシス(創世記)
晩年のシャーは、私を弟子として拾ってくれた。私は中学校を三日間通っただけで中退し、それ以来、五年間も家に引きこもってしまった。全ては、オキツグのいじめに原因がある。

 シャーは、ユダ王国の荒れ野に、学校を新しく設立した。引きこもりやいじめなどで苦しむ若者たちを対象にした、各種学校だ。

司祭者たちに相談を持ちかけ、さらに文部科学省に圧力をかけて予算を捻出してもらった。

 私は、両親から強引にも家から追い出され、三年間、寮に入り学校に通った。シャーの講義には説得力があった。

人生を生き抜く言葉の重みがずしりと、身にしみた。私の心が動き、苦悩を徐々に克服していった。

 自給自足の生活だ。怠けていると餓死してしまう。働かなければ、生きられない。お金だってない。生活するにも、節約術と創意工夫が求められた。

食事だって自炊だ。両親や他人に、甘えるわけにはいかない。農作業が、いつしか楽しくなってきた。

 この学校はいじめられっ子の集まりなのに、なぜかいじめが多発した。自分でも弱い者をいじめると、なぜか気分が壮快になる。

正直、楽しい。それに気づくことなく、いじめを行っていた。私もしょせん、いじめっ子と同類なのだ。相手を傷つけていた。

 いじめられっ子は、ささいなその一言、その行為で深く傷つく。年をとっても覚えている。

しかしいじめっ子は、そんな過去のことなど全然覚えていない。すっかり忘れている。人間なんて、そんなものだ。

「過ぎたことで、心を煩わされるな(ナポレオン)」
 
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