ジェネシス(創世記)
通常ウイルスというものは、人類にとって害悪(がいあく)をもたらす病原菌ではあるが、反面(はんめん)、人類の脳を活性化させるだけの、特殊(とくしゅ)な「菌体(きんたい)毒素(どくそ)」を備(そな)えもっていたらしい。

 火星のウイルスに感染(かんせん)した、類人猿たちから始まった。最初は、高熱によって命(いのち)を奪(うば)われる類人猿もいた。

その毒素(どくそ)の試練(しれん)に耐(た)え抜(ぬ)き、生(い)き延(の)びた者だけが、優(すぐ)れた知能を持(も)ち合(あ)わせることができた。「主」から選(えら)ばれた、「神の子・救世主」なのだ。 

 類人猿の遺伝子を操作(そうさ)し、細胞核を変異(へんい)させた。人類の進化が、加速的(かそくてき)に発展(はってん)した。

樹(き)の上(うえ)から下(お)り、土の上の生活を始めた。二本足で立ち上がり、歩行(ほこう)するようになった。手や指を使用し物を掴(つか)み、それを道具として活用した。

 それが脳を発達させ、「知能」をもたらした。石や木の棒(ぼう)や骨を武器として扱(あつか)い、狩猟(しゅりょう)を覚(おぼ)えた。

部族(ぶぞく)同士(どうし)でお互(たが)いに縄(なわ)張(ば)り争(あらそ)いをすることで、武器がさらに発展(はってん)していった。

 彼らは家族を愛し、子供達を愛した。仲間を愛することで集団性(しゅうだんせい)・社会性(しゃかいせい)を身(み)につけた。

仲間同士で助け合い、猛獣(もうじゅう)たちからの襲撃(しゅうげき)に立ち向かうことで、生き延びる知恵(ちえ)を得(え)ていった。

そんな彼らは東のアフリカを去(さ)り、大陸を渡(わた)り歩(ある)き、世界中に散(ち)っていった。

 人類は、東や西へ、北や南へと大陸を渡り歩き、イカダで大海(たいかい)を航海(こうかい)しては、世界各地へと広がった。

また海面が凍(こお)り、陸(りく)続(つづ)きとなった氷塊(ひょうかい)の上をも渡り歩いた。

 
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