ジェネシス(創世記)
紀元前七0一年頃、アッシリア帝国のセン国王が、「古代バビロニア王朝」の建物を破壊した。さらにセン国王は、一八万人もの軍隊を動員してエルサレムを包囲していた。

 エルサレムから離れた場所に、一00人ほどが住む特別居住地があった。ある夜、たった一00人の町民だけで、一八万人の敵の軍隊に歩いて立ち向かった。

老人や女性、農夫たちや子供たちで構成されていた。皆、マントやタオルなどで顔や肌を隠していた。

 剣もなければ、ナイフもない。武器は何一つ所持していない。唯一の武器は、「勇気と愛」だけであろう。

一00人は、敵の陣営の前で立ち止まった。セン国王や将軍たちは、あざけ笑っていた。これでも戦士たちなのかと。長老は、恐怖で身体が震えている。やはり死ぬことは怖いようだ。

 長老は、将軍の手を軽く握りしめ、手の甲にキスをした。そしてマントを脱ぎ、タオルを顔から外した。

長老の顔面や全身は、イボイボだらけだった。発熱を伴い、発疹があり弱り切った身体で、将軍の目を見つめニヤリと微笑みかけた。一00人は「天然痘」を患っていた。短い命だ、潔よく死ぬ覚悟をしての出陣だ。

 セン国王や将軍や兵士たちは、慌てふためいた。きっとどんな兵士たちよりも、強敵であった。

長老たちを直接殺害しても、血が剣に付着すれば接触感染する。一00人は細菌兵器だ、近くにいるだけで空気感染するかもしれない。天然痘は不治の病なのだ。
 

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