ジェネシス(創世記)
長老たち一00人は、兵士たちに抱きついた。ツバを吐きかけたりして、感染を拡大させた。セン国王たちは、一目散になって逃げ惑った。

逃げる以外に方法はない。一八万人の青ざめたアッシリア軍は、顔を引き面せて撤退を始めるのであった。

 しかし健康な兵士たちは、町に帰っても居場所がない。感染していないという証拠は、何一つない。

住民全員が、兵士たちの受け入れを拒否した。セン国王を始めアッシリア軍は、自ら隔離した居住区を設けて、そこで一生を終えることになった。

 朝、居住区に戻った長老たちは、いつも通りの生活を送っていた。仲間が殺されたのは三人だけだ。

一方、ユダの兵士たちがいざ出陣してみると、敵の軍隊がどこにもいなかった。きっと、不思議な表情を浮かべていたことであろう。

 その頃、エルサレムの町では牛にかかる病、「牛痘」が流行っていた。長老たちは牛肉やチーズを食べたい、牛乳やヨーグルトが飲みたい、と我がままを言い出した。

エルサレムの酪農家たちは、ここぞとばかりにその病にかかった牛たちを、快く無償にて提供した。どうせ死に行く者たちの集りだ、焼却処分するよりましである。

 牛痘は牛に発生する皮膚疾患ではあったが、まれに乳搾りをしていた農夫たちが、その症状を発していた。

発熱に軽いイボイボや発疹が起きたが、すぐに完治していたようだ。その贈られた数頭の牛によって、特別居住区の住人は不思議と回復していった。それは「牛痘ウイルス」という免疫抗体が、天然痘を殺菌し守ってくれたようだ。

 その後セン国王は、エルサレムから送られた二人の刺客(暗殺する人)によって殺害されてしまった。

少なくとも、勇敢な住人たちの行動によりエルサレムは救われた。聖油は注がれなかったが、一00名は「救世主」と呼ばれた。

「いかなる犠牲においても、平和を(ラマチーヌ)」

「平和は、人類最高の理想なり(ゲーテ)」 
 
< 185 / 375 >

この作品をシェア

pagetop