ジェネシス(創世記)
第一三代国王ヒゼが、病に倒れた。司祭者のイザは、「いちじく」を食べさせて治療した。

いちじくには回虫駆除の効用があり、葉は薬用、乳汁は「ぢ」の塗布、果実には緩下剤が含まれていた。イザはヒゼに、その「寿命を少しでも延ばす」と断言した。

「主」からの言葉だ。だがヒゼ国王としては、それを信じるだけの証明がほしかった。
「光あれ」

寝室に日時計があった。その影が一0度ほど逆戻りした。ヒゼ国王はその現象を目撃して、思わず「主」の言葉を信じてしまった。

 天には、太陽の他にも別な輝きがある。超新星だ。宇宙の彼方で、太陽の数百倍の質量を持つ星が爆発した。

数百万光年もかかって今、偶然にも光が届いたのだ。この光によって、日時計の影は多少なりとも移動したかもしれない。

 鎌倉時代の初期、藤原定家の「明月記」には、一0五四年五月に、超新星の記述が記されている。

中国の「宋書天文史」にも、記述がなされている。この時、二三日間くらい白昼でも観察できたらしい。私は、そんな未来の夢を見た。

 その後、友好国であったバビロンの王子メロが、軍隊を率いてユダ国を襲撃した。エルサレムの財宝を、ことごとく略奪してしまった。

幸いにも、イザの素早い機転により、「契約の箱」だけは地下室に隠すことができた。そしてヒゼ国王は、その襲撃によって長い眠りにつくのであった。


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