ジェネシス(創世記)
ある日マリオンが、こっそりと私のコピー本を持ち出し、ユダの出版社にこの書物の話を持ちかけた。するとユダ人は、受け入れてくれた。

マリオンの熱意に負けたのであろう。企画出版の依頼が飛び込んできた。その結果、私の「聖書」はベストセラーになった。

 ローマの出版社は、さぞ悔しかったことであろう。翌年からは印税だけで家計が成り立った。これも新妻マリオンの賜物である。

帰宅することが、楽しい。新しい子供たちと、食卓を囲む事が楽しい。これが、家族というものなのか。前妻と別れたのは、正解だった。

「女とは何であるか。ただ自然の美しい仕損じの一つにすぎない(カウリー)」

「女はただ女であるが、良き葉巻は煙になる(キプリング)」

 この書物は、自分では史実にもとづいた作品のつもりだったのに、なぜか空想物語として読者たちから評論された。真実だろうが、空想だろうが、とにかく売れてうれしい。売れればそれでいいのだ。

 この書物を、「契約の箱」に保管してもらいたいくらいだ。「種子」とはもしかして、「聖書」のことではないのか。「主」にとって、単なる書物ではないようだ。

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